秩父蒸留所。
かつて、埼玉には羽生蒸溜所(東亜酒造)という、ウイスキー蒸溜所があった。
しかし、あえなく経営破綻し現在はキング酒造傘下となっている。
そして、その羽生蒸溜所の原酒を引き継ぎ、あたらしく秩父蒸溜所を創った者がいた。
羽生蒸溜所創業者の孫、肥土 伊知郎氏である。
2008年から稼働を開始した秩父蒸溜所の原酒と、羽生蒸溜所から引き継いだ原酒をヴァッティングしたモルトウイスキーがこの、ダブルディスティラリーズだ。
なお、ロットを表すボトルナンバーは26。
ここで、なぜ、ボトルナンバーを挙げるかというと、羽生蒸溜所の原酒は量が限られていることに加え、秩父蒸溜所の原酒も豊富にあるというわけではない。
そのため、ボトルによりヴァッティング(ブレンド)が微妙に異なるのだ。
そんなダブルディスティラリーズの味わいとは如何なるものか、愉しんでみたい。
トップからして非常に複雑な香りが引き立つ。秩父蒸溜所の原酒比率が高いのか最初にミズナラ樽のニュアンスがきた後、クリーム、シトラスといったところも感じる。
味わいにおいてもミズナラ樽らしい味から柑橘類のフレッシュさと柔らかい微かな甘さを感じる。
フィニッシュでは爽やかさを残し、スッと消えていくようだ。
実は秩父蒸溜所でこれとは異なるボトルナンバーのダブルディスティラリーズを試飲したのだが、明らかに味わいは異なっている。
しかし、これがイチローズモルトというものだ。
限られた原酒を元にしているのだ、ボトルナンバーにより味は違って当然。
それでも、美味いものは美味い。
あと、どれだけ羽生蒸溜所の原酒が残っているかは知る由も無いが、このダブルディスティラリーズを一人でも多くの人に味わってもらいたい。